「アポ1件3万円」という数字を見て、高いと感じるか安いと感じるかは、その3万円が何に使われているかを知っているかどうかで変わります。ここでは金額の内訳を工程ごとに分解し、最後に「自社にとって妥当か」を判断する式を示します。

アポ1件の裏で動いている工程

1件のアポが成立するまでに、実際には次の工程が走ります。

工程中身人手か機械か
リスト作成対象企業の抽出、窓口の特定、重複と除外の照合人手が中心
文面作成商材の理解、訴求の設計、反応を見た改善人手
配信・投稿送信、到達の監視、配信停止の処理機械
返信対応返信の読み分け、日程のやり取り人手
前日の電話出席確認、状況のヒアリング人手
再調整リスケの受け付けと日程の引き直し人手
情報の受け渡し商談前の情報整理、通知機械+人手

見てのとおり、機械が担うのは配信そのものだけです。配信システムの費用は月数千円から数万円で済みますが、それ以外の工程はすべて人が動きます。アポ単価の大半は人件費です。

単価を決めているのは「分母」

もう1つ効くのが、1件のアポを取るために必要な接触数です。これは商材によって桁が変わります。

商材の性質アポ化率の目安1アポに必要な接触数
ほぼ全社に課題があり得る(経費削減など)0.5〜1%100〜200件
業界や規模が限られる0.1%前後約1,000件
いま検討中の相手だけが該当(事業承継など)0.01%台約10,000件

最下段のケースでは、1件のアポの背後に約1万件の接触があります。リストを作る工数、送る工数、返信を読み分ける工数がすべて1万件ぶん発生して、成果は1件です。この構造を知ると「3万円は高い」という感覚は変わります。

3万円の使い道(概念的な配分)

正確な配分は会社ごとに違いますが、比重の順序はおおむね共通しています。

費目性質比重
電話の人件費前日架電・返信フォロー。1件ごとに発生
リスト・文面の工数案件単位で発生し、件数で割られる
空振りの吸収無効アポを課金しない設計なら代行側の負担
配信インフラドメイン、配信システム、監視
利益

ここで重要なのは「空振りの吸収」という費目が存在するかどうかです。来なかった商談を課金しない設計にすると、その原価は代行側が被ります。単価にはその保険料が含まれます。逆に言えば、この費目がない会社は単価を下げられますが、空振りの費用は発注側に移っているだけです。

安い単価が成立する3つの理由

相場より明確に安い提案には、たいてい理由があります。

  1. 課金タイミングが早い — 日程が決まった時点で課金。空振りの費用は発注側へ。
  2. 工程が抜けている — リストは発注側が用意、商談前の確認なし、再調整は発注側。
  3. 件数で薄く稼ぐ設計 — 1件あたりの手間を削り、量で回す。質のばらつきは大きくなる。

いずれも不当ではありませんが、安さの理由がこのどれなのかは確認したほうがよいということです。理由を説明できない安さは、あとで自社の工数か機会損失として返ってきます。

自社にとって妥当かを出す式

相場との比較ではなく、自社の数字で判断します。

アポ1件の期待粗利 = 受注1件の粗利 × 商談からの受注率

受注1件の粗利商談からの受注率アポ1件の期待粗利単価3万円の位置
30万円10%3万円ちょうど損益ゼロ
30万円20%6万円単価は粗利の50%
100万円20%20万円単価は粗利の15%
500万円10%50万円単価は粗利の6%

粗利が大きい商材ほど、アポ単価は相対的に小さくなります。逆に粗利30万円・受注率10%なら、単価3万円はちょうど損益ゼロです。この場合は単価交渉より、受注率を上げる(=商談前の情報を厚くする)ほうが効きます。

結論

  • アポ単価の大半は人件費。機械が担っているのは配信だけ
  • 単価を決める最大の変数は1アポに必要な接触数。商材で桁が変わる
  • 安い単価には理由がある。課金タイミング・省略された工程・件数依存のどれかを確認する
  • 妥当性は相場ではなく受注粗利 × 受注率で判断する