営業代行のメールでは、「誰が誰のために送っているのか」を本文で明示します。これは法的な要請であると同時に、商談の入口での信用に直結します。
本記事は実務上の整理であり、法的な助言ではありません。個別の判断は専門家に確認してください。
表示義務は「送信する者」にかかる
特定電子メール法4条は、送信者の氏名または名称、受信拒否の通知先、住所、問い合わせ先の表示を求めています。ここで重要なのは、義務は実際に送信する者にかかるという点です。
| 構図 | 表示すべき送信者 |
|---|---|
| 自社が自社のために送る | 自社 |
| 代行会社がクライアントのために送る | 代行会社(そのうえで依頼元を明記) |
したがってクライアント名だけを出して代行会社を隠す形は避けます。表示義務を満たしていないおそれがあるうえ、相手から見て連絡先が実体と一致しません。
書き方の例
本文の末尾に、次のような形で入れます。
| 状況 | 書き方 |
|---|---|
| 代行 | 本メールは、貴社サイトで公開されているアドレス宛に◯◯株式会社の代理として送信しております。 |
| 自社 | 本メールは、貴社サイトで公開されているアドレス宛に送信しております。 |
この一文には2つの役割があります。
- 誰の営業なのかが分かる(相手が判断できる)
- なぜアドレスを知っているのかが分かる(公開情報から取得したという説明)
2つ目は相手の最初の疑問に先回りで答える効果があります。
隠すと何が起きるか
代理であることを書かないと反応が良くなる場合はあります。しかし後で判明したときの損失が大きくなります。
| 判明する場面 | 相手の受け取り方 |
|---|---|
| 商談の冒頭 | 「代行だったのか」=説明の信用が下がる |
| 契約の直前 | 契約主体が違うことに気づき、確認のやり直しになる |
| クレーム時 | 誰に言えばよいか分からず、双方への不信になる |
最初に書いておけば、これらはすべて起きません。反応率のわずかな差より、商談に進んだ相手との信用のほうが価値があります。
自社の営業では代理表記を出さない
実装上の注意点です。代行を前提に文面を組むと、自社の営業に使ったときに「自社が自社の代理として」という表記になります。これは事実に反します。
| 依頼元 | 出力すべき表記 |
|---|---|
| 自社と同じ | 代理表記を出さない |
| 自社と異なる | 「◯◯の代理として」を出す |
文面を自動生成する仕組みでは、依頼元の名称と自社の名称が一致するかで分岐させます。同じことは予約ページなど、他の顧客向け画面にも当てはまります。「自社が自社の代理として運営しています」という表示が残っていないか確認します。
返信先をどこにするか
代理表記と同じくらい実務的に重要なのが、返信先の設計です。
| 一次対応をする側 | 返信先 | 注意点 |
|---|---|---|
| 代行会社 | 代行会社 | クライアントへの共有の仕組みが必要 |
| クライアント | クライアント | 代行会社が返信内容を把握できなくなる |
どちらでも構いませんが、返信が誰にも読まれない状態を作らないことが最優先です。よくある事故は、送信専用アドレスを差出人にしてしまい、返信が消えることです。
また、配信停止の意思表示は返信で来ることもあります。「配信不要」という返信を受け取れる経路がなければ、法定の対応ができません。
チェックリスト
| # | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 実際に送信する事業者の名称が本文にあるか |
| 2 | 代行なら依頼元を明記しているか |
| 3 | 自社の営業で「自社の代理」になっていないか |
| 4 | 住所と問い合わせ先が入っているか |
| 5 | 配信停止のURLが入っているか |
| 6 | 返信を受け取れるアドレスが差出人になっているか |
| 7 | 「配信不要」の返信を検知して除外に入れる経路があるか |
1〜5は法定の表示に関わる項目、6〜7は運用上の必須項目です。どれか1つでも欠けていたら送らないという自己点検を、送信の直前に機械的に行うのが確実です。
まとめ
- 表示義務は実際に送信する者にかかる。代行会社が送るなら代行会社の名称が必要
- そのうえで「◯◯の代理として」と依頼元を明記すると、誰の営業か分かる
- 隠しても後で判明する。反応率のわずかな差より信用のほうが価値がある
- 自社の営業では代理表記を出さない。文面もページも分岐が必要
- 返信先は一次対応をする側。返信が誰にも読まれない状態を作らない
- 送信直前に7項目を機械的に点検する