「営業代行を使うべきか、人を採って内製すべきか」は、感覚ではなく件数と固定費の比較で答えが出ます。ここでは両方のコスト構造を並べ、判断の順番を示します。
コスト構造が違う
| 項目 | 内製 | 外注(成果報酬) |
|---|---|---|
| 費用の性質 | 固定費 | 変動費 |
| 成果ゼロのとき | 満額の人件費が出る | 支払いは発生しない |
| 件数が増えたとき | 1件あたりが下がる | 総額が線形に増える |
| 立ち上がり | 採用+学習で数か月 | 3〜6週で初アポ |
| 社内に残るもの | ノウハウ・人・リスト | 契約次第 |
この表から分かるのは、「どちらが優れているか」ではなく「件数がどこにあるか」で答えが変わるということです。
内製のコストは人件費だけではない
内製の見積で漏れやすい費目を挙げます。
| 費目 | 中身 | 見落とし度 |
|---|---|---|
| 人件費 | 給与・社会保険・採用費 | 低 |
| リスト作成の工数 | 抽出・窓口の特定・重複と除外の照合 | 高 |
| 配信システム | 配信ツール、送信の管理 | 中 |
| ドメインと設定 | 専用ドメイン取得、SPF/DKIM/DMARC設定 | 中 |
| 到達率の学習コスト | バウンス・苦情・ウォームアップの知識 | 高 |
| 法務の確認 | 特定電子メール法の表示義務、個人情報の扱い | 中 |
太字の2つが内製の実質的な難所です。とくに到達率は知らずに始めると、送信ドメインを1つ潰してから学ぶことになります。自社の本業ドメインで始めてしまうと、顧客対応メールまで届かなくなります。
数字で比べる
営業担当1名の総コストを月60万円(給与・社保・諸経費込み)と仮定します。他業務と兼務せず、リスト作成から返信対応まで担当する場合の比較です。
| 月のアポ数 | 内製(月60万円) | 外注(@3万円) | 有利なのは |
|---|---|---|---|
| 5件 | 1件12万円 | 15万円(1件3万円) | 外注 |
| 10件 | 1件6万円 | 30万円 | 外注 |
| 20件 | 1件3万円 | 60万円 | 同じ(分岐点) |
| 30件 | 1件2万円 | 90万円 | 内製 |
| 50件 | 1件1.2万円 | 150万円 | 内製 |
分岐点は月20件です。ただしここには落とし穴があります。「1人で月20件のアポが取れる」という前提が成立するかどうかです。
1人で月20件は簡単ではない
アポ化率0.5%なら、月20件のアポには4,000件の接触が必要です。1人がリスト作成から返信対応まで担当する場合の内訳を考えます。
| 工程 | 月4,000件ぶんの工数感 |
|---|---|
| リスト作成(窓口特定を含む) | 1件あたり数分でも、4,000件では膨大 |
| 配信 | ツールがあれば軽い |
| 返信の読み分け(40〜120件) | 1件5〜10分 |
| 日程調整・再調整 | 往復が発生する |
| 前日の確認電話(20件) | 1件10分+記録 |
この総量を1人で回すのは現実的ではありません。内製が分岐点を超えるには、リスト作成を仕組み化するか、複数人を置く必要があります。複数人にすれば固定費が上がり、分岐点も上がります。
したがって実務的な順序はこうなります。
- まず外注で実測する(アポ化率・反応する文面・効くターゲット)
- 件数が安定して分岐点を超えたら内製化を検討する
- 内製化するときは、外注期間に得たリストと文面をそのまま資産として引き継ぐ
外注するなら「資産が残る契約」にする
外注のデメリットは、ノウハウが社内に残らないことです。これは契約で緩和できます。
| 契約に入れること | これがないと |
|---|---|
| リストの帰属(終了時に受け取れる) | ゼロから作り直しになる |
| 文面と反応データの共有 | 効いた型が分からない |
| アポ化率などの実測値の開示 | 内製化の見積が立たない |
| 獲得済みリードの帰属 | 終了後に接触できない |
この4行が入っていれば、外注期間は「実測しながら資産を作る期間」になります。入っていなければ、支払った金額はアポ件数だけに消えます。
併用という第3の選択
実務でよく機能するのは、工程で分ける形です。
| 工程 | 向く担当 | 理由 |
|---|---|---|
| ターゲット定義・商材の言語化 | 自社 | 外注できない前提の部分 |
| リスト作成 | 外注 | 量が要る。仕組みを持つ側が速い |
| 配信と到達管理 | 外注 | 専門知識と設備が要る |
| 返信の読み分け | どちらでも | 商材理解が必要だが量も多い |
| 商談 | 自社 | 受注責任を持つ側がやる |
まとめ
- 内製は固定費、外注(成果報酬)は変動費。件数で有利不利が逆転する
- 担当1名月60万円・アポ単価3万円なら分岐点は月20件
- ただし1人で月20件は難しい。リスト作成の工数と到達率の学習コストが重い
- 順序は「外注で実測 → 分岐点を超えたら内製化」。そのときリストと文面が自社に残る契約にしておく