営業代行は、1社で完結していないことがよくあります。リストと配信の仕組みを持つ会社、販売する会社、電話をかける会社が別、という構成です。このとき「最終顧客と契約するのはどの会社か」は、当事者にとっても発注側にとっても効いてくる論点です。

本記事は実務上の確認点の整理であり、法的な助言ではありません。契約の設計は弁護士の確認を受けてください。

よくある3層構造

役割やること顧客との距離
システム側リスト作成、文面、配信、予約や通知の仕組み遠い
販売側営業、提案、契約の締結近い
電話側前日の確認、返信のフォロー、再調整

この3つが同一社なら論点は生じません。分かれている場合に、契約主体をどこに置くかで力関係が変わります。

提供側から見た論点

提供側(複数社で組んでサービスを出す側)にとって、契約主体は事業の生存に直結します。

契約主体提携が解消されたとき
システム側が契約顧客はシステム側に残る。販売側は別の商材を売る
販売側が契約顧客は販売側に残る。システム側は仕組みを持ちながら顧客ゼロになる

2行目は具体的な危険を含みます。システムを作った側が販売側の下請けになると、差し替え可能な立場になります。仕組みは資産ですが、顧客との関係がなければ収益に変換できません。

逆に販売側から見れば、自社が契約主体でないと「自分で獲った顧客が他社のものになる」と感じます。したがってここは力関係の交渉になり、曖昧にしたまま始めると解消時に必ず衝突します

落としどころの例

どちらかに寄せる以外にも、間を取る設計があります。

設計中身向く場面
システム側が契約主体+紹介料販売側には成果に応じた継続報酬システム側の投資が大きい
販売側が契約主体+利用料システム側には月額または成果連動の利用料販売側の顧客基盤が主導
案件ごとに決める持ち込んだ側が契約主体になる双方が独自に顧客を持つ
共同名義両社連名で契約責任分担を明示できる場合

3行目の「持ち込んだ側が主体」は公平に見えますが、誰が持ち込んだかの定義が必要です。紹介の起点が両社にまたがるケースが必ず出るため、判定ルールを先に決めておきます。

発注側(顧客)が確認すること

ここまでは提供側の話ですが、発注する側にも実利があります。確認するのは4点です。

#確認することなぜ
1請求書の発行元はどこか経理処理と、責任の所在が一致しているか
2実際に作業するのはどの会社か再委託が明示されているか
3個人情報の取扱主体と再委託の管理責任見込み客の情報を誰がどこまで扱うか
4提携解消時にサービスは継続するか途中で止まると自社の営業計画が崩れる

3つ目は法令上も重要です。見込み客の氏名・所属・連絡先は個人情報であり、外部に取り扱わせる場合は委託先の監督責任が生じます。再委託が黙って行われている構造は、発注側にとってリスクです。

「止まらない契約」にする条項

発注側が入れておくと安全な条項を挙げます。

  • 再委託先の変更が可能であること(特定の会社が抜けてもサービスが続く)
  • 終了時のデータ返還・削除(リスト、獲得済みリード、通話記録)
  • 進行中アポの扱い(終了後に実施される分の課金と実施責任)
  • 窓口の一元化(品質問題の連絡先が1つに決まっている)

とくに1つ目は、3層構造のサービスを使う場合の実質的な保険です。電話を担当する会社が抜けたときにサービス全体が止まる契約だと、自社の営業計画がその会社の事情に左右されます。

確認の聞き方

実務では次のように聞くと、構造が短時間で分かります。

  1. 「請求書はどの会社から届きますか」
  2. 「リストの作成と配信は、御社が自社で行っていますか」
  3. 「前日の確認電話は、どの会社の担当者が行いますか」
  4. 「万一提携先が変わった場合、サービスは継続しますか」

4つとも答えが明快な会社は構造が整理されています。言い淀む場合は、契約主体と実行主体の関係が曖昧なまま運用されている可能性があります。

まとめ

  • 営業代行は複数社の組み合わせで提供されることがあり、契約主体をどこに置くかで提携解消時に顧客がどちらに残るかが決まる
  • 提供側では、仕組みを持つ側が契約主体でないと差し替え可能な下請けになり得る
  • 発注側は、請求元・実行主体・個人情報の取扱主体・提携解消時の継続性の4点を確認する
  • 「再委託先の変更が可能」「終了時のデータ返還」を入れておくと、止まらない契約になる

出典