アポ獲得代行の契約は、成果の定義が曖昧なまま始まりやすい取引です。金額の交渉は誰でもしますが、揉めるのは金額ではなく「何を1件と数えるか」です。ここでは締結前に確認しておく12項目を、揉めやすい順に並べます。
なお本記事は実務上の確認点の整理であり、法的な助言ではありません。締結前には弁護士の確認を受けてください。
1〜3. 成果の定義(最優先)
| 項目 | 書いておくこと | 抜けると起きること |
|---|---|---|
| 1. 課金の発生時点 | 日程確定時か、商談実施時か | 来なかった商談にも支払う |
| 2. 重複の扱い | 同一企業の複数部署は1件か複数件か | 同じ会社で件数が積まれる |
| 3. リスケの扱い | 再調整は新規1件と数えない | 1件が2件として請求される |
3つとも「言われてみれば当然」ですが、書いていない契約書は珍しくありません。請求書が来てから議論すると、必ず発注側が押し切られます。
4. 無効アポの定義
類型を列挙しておきます。少なくとも次の5つは入れておきたいところです。
- 相手が来なかった(無断欠席)
- 担当部署・決裁の圏外だった
- 何の話か理解していなかった(話が通っていない)
- 会社名・担当者名が実在しない、連絡が取れない
- 同一企業の重複
5〜6. 判定の手続き
定義だけでは足りません。誰が判定し、いつまでに、どう処理するかまで書きます。
| 項目 | 実務的な落としどころ |
|---|---|
| 5. 判定者と期限 | 発注側が商談実施後3営業日以内に申告。期限を過ぎたら有効として扱う |
| 6. 無効時の処理 | 請求しない(無償化)/同条件で1件を再提供 のいずれかを明記 |
「期限を過ぎたら有効」という条文は代行側に有利に見えますが、これがないと請求が無期限に止まり、代行側が業務を続けられません。双方が回る条件にしておくほうが、結果として関係が続きます。
7. 空振り原価を誰が負担するか
無効アポを課金しない設計にすると、その1件にかかった工数(電話・調整)は誰かが被ります。ここを明記しておくと、後の値上げ交渉の根拠が透明になります。
実務では、前日の電話を担当する側が空振り原価を負う形が合理的です。電話をかける本人が空振りのコストを持てば、架電の質と責任が一致し、保証がコストの垂れ流しになりません。
8. 支払期日
「アポ確定月の翌月末」が一般的ですが、これは発注側から見ると受注が決まる前に支払いが来る可能性を意味します。
| 時点 | お金 |
|---|---|
| 8月 | アポ確定 |
| 9月末 | 代行費の支払い |
| 10月以降 | 受注・入金(決まれば) |
商談から受注までが長い商材では、この時間差が積み上がります。締め日・支払日・請求書の発行タイミングをセットで確認してください。
9. リストの出所と独占
| 決めること | なぜ |
|---|---|
| 出所の開示義務 | 購入名簿なら販売元、公開情報なら収集方法を答えられる状態にしておく |
| 公開元URLの記録 | 特定電子メール法で同意不要とされる根拠そのもの(同法3条1項4号) |
| 独占の範囲 | 同じリストを競合の営業に使わないか。使う場合の条件 |
3つ目は見落としやすい論点です。代行会社が複数のクライアントを持つ以上、同じ企業に別商材の営業が行く可能性があります。同じ相手に短期間で複数回当たると、その企業からは全部まとめて拒否されます。再接触の最低間隔(クールダウン)を決めておくと安全です。
10. 送信ドメインと表示義務
営業メールを送る場合、次の2点を条文に入れておきます。
- 発注側の本業ドメインを送信元に使わないこと
- 全通に送信者名・住所・受信拒否の連絡先を表示すること(特定電子メール法4条)
1つ目は発注側を守る条項です。営業メールの評判悪化が本業のメールに波及すると、被害は代行費の何倍にもなります。
11. 秘密保持と個人情報
やり取りするのは見込み客の氏名・所属・連絡先で、これは個人情報です。委託関係になるため、次を確認します。
- 取得したデータの利用範囲(この案件限りか)
- 再委託の可否と、再委託先の管理責任
- 漏えい時の通知義務と手順
- 契約終了時の返還・削除
12. 契約終了時の帰属
終了時に揉める論点はここに集まります。
| 対象 | 決めておくこと |
|---|---|
| 獲得済みリード | 発注側に残るか、代行側も保持できるか |
| 進行中のアポ | 終了後に実施された分の課金はどうするか |
| リスト・データ | 返還か削除か、証跡を出すか |
| 顧客との契約主体 | 最終顧客と契約しているのは誰か |
最後の1行は、代行を「使う側」でも「提供する側」でも同じくらい重要です。契約主体が代行会社側にあると、提携が終わったときにシステムやノウハウを持っている側に顧客が残らないという事態が起こり得ます。
12項目の一覧
| # | 項目 | 優先度 |
|---|---|---|
| 1 | 課金の発生時点 | 最優先 |
| 2 | 重複の数え方 | 最優先 |
| 3 | リスケの数え方 | 最優先 |
| 4 | 無効アポの定義 | 最優先 |
| 5 | 判定者と判定期限 | 高 |
| 6 | 無効時の処理 | 高 |
| 7 | 空振り原価の負担 | 高 |
| 8 | 支払期日 | 高 |
| 9 | リストの出所と独占 | 中 |
| 10 | 送信ドメインと表示義務 | 中 |
| 11 | 秘密保持・個人情報 | 中 |
| 12 | 終了時の帰属 | 中 |