営業代行に「リストと文面の承認」を入れると、その分だけ立ち上がりは遅くなります。ではなぜ入れるのか。理由は承認を省いて起きる事故が、いずれも取り返しがつかない種類のものだからです。
承認がないと起きる4つの事故
| 事故 | 起きること | 取り返し |
|---|---|---|
| 既存顧客に営業メールが届く | 「うちはもう客だが」と担当者に連絡が入る | 難しい |
| 商談中の相手に新規営業が届く | 社内連携ができていないと見られる | 難しい |
| 事実と違う実績が書かれる | 「導入実績多数」等の検証できない表記が自社名で出る | 不可 |
| 取引先・競合に当たる | 関係に無用な波風が立つ | 難しい |
いずれも「あとで謝る」で済まない性質です。配信は取り消せません。1通でも出たら、それは相手の受信箱に残ります。
リストの承認は「全件を読む」ことではない
承認が重いと感じる原因は、全件を眺めようとするからです。実際に見るべきは2点だけです。
- 除外リストとの照合結果 — 既存顧客・商談中・取引先・競合が落ちているか
- 抽出条件 — どの条件で絞ったのか。条件が意図と合っているか
この2点なら、リスト1,000件でも確認は30分程度で終わります。逆にこの2点を代行会社が示せない場合は、リストの作り方自体に問題があります。
| 代行会社に出してもらうもの | 確認内容 |
|---|---|
| 抽出条件 | 業種・規模・地域・役職などの指定内容 |
| 除外の突き合わせ結果 | 何件が除外に該当して落ちたか |
| 出所 | 公開情報か購入名簿か。公開元URLを記録しているか |
| 重複の統合結果 | 表記ゆれ(株式会社の有無・全角半角)で同じ会社が二重に入っていないか |
4つ目は地味ですが効きます。「株式会社ABC」「(株)ABC」「ABC株式会社」が別行として残っていると、同じ会社に3通届きます。これは最も安く発生し、最も高くつく事故です。
文面の承認で必ず削るもの
文面のチェックは表現の好みではなく、事実確認が本体です。次の表現は原則として削ります。
| 表現 | なぜ削るか |
|---|---|
| 業界No.1/最安 | 根拠を示せない優位性の主張になる |
| 導入実績多数/多くの企業が | 数を言えないなら書かない |
| 必ず/確実に成果が出ます | 成果は相手の状況に依存する |
| 今だけ/残りわずか/枠が埋まりつつあります | 急かす表現は信用を落とす。事実でないなら特に |
| 肩書き・受賞歴の未検証な記載 | 確認できない権威付けは書かない |
逆に、書いてあると安心できるのは次の3点です。
- 誰が誰の代理で送っているのか(代行の場合、その明示)
- なぜこの相手に送ったのか(公開情報のどこを見たのか)
- 1クリックで配信を止められる導線
3つ目は義務でもあります。特定電子メール法4条は、送信者名・住所・受信拒否の連絡先の表示を求めています。
承認を軽くする運用
承認を形式にせず、かつ止めないための工夫です。
| やり方 | 効果 |
|---|---|
| 初回だけ厳しく、2回目以降は差分だけ見る | 2回目以降の確認が数分で終わる |
| 文面は複数案をまとめて承認しておく | 検証のために文面を切り替えるたびに止まらない |
| 除外リストを先に渡して自動照合させる | 人が目で探す作業が消える |
| 承認の期限を決める(例:2営業日) | 自社側が原因の遅延を防げる |
とくに2番目が効きます。文面のABテストをする場合、案を1つずつ承認していると検証のたびに待ちが発生します。最初に複数案を承認しておけば、以後は代行側の判断で切り替えられます。
承認履歴を残す
「誰がいつ何を承認したか」の記録は、後の食い違いを防ぎます。とくに次の場面で機能します。
- 「そんな文面は聞いていない」という指摘が出たとき
- クレームが入り、実際に送った内容を確認する必要が出たとき
- 無効アポの判定で、どのリストから来た相手か遡るとき
紙のやり取りでもメールでも構いませんが、承認済みでない文面・リストは配信できない仕組みにしておくのが最も確実です。人の記憶に頼るとどこかで抜けます。
まとめ
- 承認を省いて起きる事故は、いずれも配信後に取り消せない
- リストの承認は全件を読むことではない。除外の照合結果と抽出条件の2点で足りる
- 文面の承認は表現の好みではなく事実確認。検証できない実績と急かす表現を削る
- 複数案をまとめて承認しておけば、検証のたびに止まらない
- 承認履歴を残す。承認済みでないものは配信できない仕組みにする