営業リストは購入しなくても作れます。公開情報から作ったほうが、精度と法的な根拠の両方で有利です。ここでは実際の作り方を工程順に示します。
工程0:ターゲットを1枚に書く
リスト作成に入る前に、これを書きます。書けないうちに集め始めると、集めたあとに全部やり直しになります。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 業種 | 具体的に。「BtoB全般」は定義ではない |
| 規模 | 従業員数・売上・拠点数のいずれか |
| 地域 | 訪問が要るなら必須 |
| 窓口 | どの部署・役職に届けたいか |
| なぜ今 | その企業が今この課題を持っている理由 |
最後の1行が最も重要で、最も飛ばされます。「なぜ今その課題を持っているのか」が言えると、公開情報の中からその兆候を探せるようになります。
工程1:兆候から企業を見つける
「業種と規模で絞る」だけでは、母集団は広いままです。公開情報には今その課題を持っている兆候が出ています。
| 情報源 | 読み取れる兆候 |
|---|---|
| 求人票 | どの職種を増やそうとしているか=いま足りていないもの |
| プレスリリース | 新規事業、拠点開設、資金調達、業務提携 |
| 会社概要・沿革 | 設立年、規模の推移、事業構成 |
| 採用ページの記述 | 組織体制、使っているツール、力を入れている領域 |
| 展示会の出展者一覧 | その分野に投資している企業 |
| 業界団体の会員名簿 | 業種の網羅的な母集団 |
とくに求人票は強い信号です。人を採ろうとしている領域は、いま社内で不足している領域です。「AI導入の担当者を募集している」という事実は、その会社がAI導入に取り組んでいる証拠になります。
工程2:窓口を特定する
企業が見つかったら、届ける先を決めます。優先順位は次のとおりです。
| 優先 | 窓口 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 目的に合った部署の公開アドレス | 採用の話なら採用窓口、事業提携なら事業開発窓口 |
| 2 | 問い合わせフォーム | 公式の入口。到達は確実 |
| 3 | 代表アドレス(info@等) | 転送されるかは不明 |
| - | 推測で作ったアドレス | 使わない |
最下段が原則です。推測アドレスは①バウンスしやすく②公開されていたアドレスではないため法的な根拠を失い③届いても関係のない部署に落ちる、という三重の不利があります。
工程3:出所を記録する
リストの列に必ず入れる項目です。ここを省くと、後で説明できなくなります。
| 列 | 中身 | 何のために |
|---|---|---|
| source | どこから集めたか(公開サイト/名簿/展示会一覧など) | 説明責任 |
| source_url | アドレスが公開されていた実URL | 同意不要の根拠(特電法3条1項4号) |
| 取得日 | いつ収集したか | 鮮度の判断 |
| 根拠メモ | なぜこの企業を選んだか(求人票の内容など) | 文面の個別化に使える |
4行目は成果に直結します。「貴社の求人ページで◯◯を募集されているのを拝見し」という一文が本文に入るだけで、無作為の一斉送信ではないと伝わります。この列があると、その一文を1社ごとに自動で差し込めます。
工程4:重複と表記ゆれを潰す
同じ会社が複数行に残っていると、同じ相手に複数通届きます。これは最も安く発生し、最も高くつく事故です。
| ゆれの種類 | 例 |
|---|---|
| 法人格の有無・位置 | 株式会社ABC / ABC株式会社 / (株)ABC / ABC |
| 全角と半角 | ABC / ABC |
| 空白 | ABC 商事 / ABC商事 |
| 英字の大小 | abc / ABC |
実務では、社名から法人格・空白・記号を落として全角を半角に寄せた「照合用の名前」を作り、それで突き合わせます。ドメインが取れる場合はドメインでの照合がより確実です。
工程5:除外を当てる
送ってはいけない先を落とします。ここを飛ばした事故は取り返せません。
- 既存顧客
- 商談中の相手
- 取引先・仕入先
- 過去に配信停止・拒否の意思表示があった相手(案件横断で)
- 直近で別の案件から接触した相手(クールダウン期間内)
- 「営業お断り」を明記している窓口
4番目と5番目は、リストを1つのマスタで管理していないと照合できません。案件ごとにリストが独立していると、同じ企業に短期間で複数の営業が行き、その企業からはまとめて拒否されます。
工程6:必要件数を計算する
件数は目標から逆算します。
| 前提のアポ化率 | 月10アポに必要な接触数 | 月30アポなら |
|---|---|---|
| 1% | 1,000件 | 3,000件 |
| 0.5% | 2,000件 | 6,000件 |
| 0.1% | 10,000件 | 30,000件 |
アポ化率は事前には分かりません。したがってまず小規模に当てて実測し、そこから引き直すのが唯一確実な方法です。最初から数万件を作るのは、前提が外れたときの損失が大きすぎます。
まとめ
- ターゲットの「なぜ今」を先に書く。書けないうちに集めるとやり直しになる
- 公開情報の中の兆候(とくに求人票)から企業を見つける
- 窓口は目的に合った公開アドレス>フォーム>代表。推測でアドレスを作らない
- 出所・公開元URL・取得日・選んだ根拠を列として記録する
- 表記ゆれを潰し、除外は案件横断のマスタで当てる
- 必要件数は目標÷アポ化率。小規模に実測してから引き直す