新しいドメインでメールを送り始めるとき、初日から全開で送ってはいけません。受信側から見た「実績」がゼロの状態で大量に送ると、その挙動そのものが不審と判定されます。
ウォームアップはその実績を作る作業です。ここでは4週間の具体的な進め方と、途中で見る数字を示します。
なぜ段階的に増やすのか
受信側(Gmail、Microsoft、各社のメールサーバー)は、送信元ごとに履歴を持っています。判断材料は主に次のとおりです。
| 見られる要素 | 新しいドメインの状態 |
|---|---|
| 過去の送信履歴 | ない |
| 苦情率の実績 | ない |
| 受信者からの反応(返信・既読) | ない |
| 送信量の推移 | これから作る |
履歴がない送信元が突然1万通送れば、それは正常な業務メールの挙動ではありません。迷惑メール送信者の典型的なパターンと一致するため、まとめて弾かれます。
4週間の進め方
以下は一般的な目安です。実際の数字は反応を見て調整します。
| 時期 | 1日の上限 | この期間の目的 | 増やす条件 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 25通前後 | 最初の履歴を作る | バウンス・苦情ゼロ |
| 2週目 | 75通前後 | 反応を確認する | バウンス率5%未満 |
| 3週目 | 300通前後 | 量を増やしても崩れないか | 苦情率0.1%未満 |
| 4週目 | 1,000通前後 | 本格運用の手前 | 同上 |
| 5週目以降 | 2,500通程度まで | 安定運用 | 数字を維持できる限り |
重要なのは「増やす条件」の列です。日数が経ったから増やすのではなく、数字が保たれているから増やします。バウンス率が上がっているのに予定どおり増やすと、そこで評判が崩れます。
この期間に見る2つの数字
| 指標 | 警告 | 停止 | 高いときの原因 |
|---|---|---|---|
| バウンス率 | 5% | 10% | リストが古い、宛先の検証をしていない |
| 苦情率 | 0.1% | 0.5% | ターゲットが合っていない、文面が営業色が強すぎる、配信停止が分かりにくい |
苦情率0.1%は1,000通に1件の迷惑メール報告です。数字としては小さく見えますが、これが警告圏の目安になります。ウォームアップ中は母数が小さいため、1件の報告で率が跳ねることに注意します(100通送って1件なら1%です)。
この期間にアポ件数を見てはいけません。1〜2週目の接触は合計で数百通程度なので、アポ化率0.5%ならアポは1〜2件です。この数字から何かを読み取ろうとすると誤ります。
ウォームアップを速く進めるコツ
日程を短縮するのではなく、崩れにくくする方向で工夫します。
| やること | 効果 |
|---|---|
| 宛先の生死を事前に検証する | バウンス率が上がらない |
| 最初は反応が期待できる相手から送る | 返信が付くと評価が上がる |
| 配信停止を目立つ位置に置く | 苦情ではなく配信停止で処理される |
| 送信間隔に揺らぎを入れる | 等間隔の連続送信は機械送信のシグナル |
| 1日の送信を営業時間内に収める | 深夜の大量送信は不審な挙動 |
3つ目が効きます。配信停止を押しにくくすると、押せなかった人が迷惑メール報告に回ります。苦情率は配信停止率よりはるかに重い指標なので、止めやすくするほうが得です。
失敗したときに何が起きるか
ウォームアップに失敗すると、そのドメインは「送っても迷惑メールフォルダに入る」状態になります。厄介なのは次の点です。
- エラーは返ってこない(受信はされるので、送信側からは成功に見える)
- 返信がゼロになるが、原因が文面なのか到達なのか区別できない
- 回復は容易ではない。実務ではドメインを変えてやり直す
つまり失敗の兆候は「返信が急に止まる」という形で現れます。この状態で文面をいくら直しても数字は動きません。バウンス率と苦情率を毎日記録しておくと、原因を切り分けられます。
本業ドメインを絶対に使わない
ウォームアップの話で最も重要な結論はこれです。営業メールは、本業のドメインから送ってはいけません。
| 送信元 | 営業メールで評判が落ちたとき |
|---|---|
| 専用ドメイン | 営業メールだけが届かなくなる。ドメインを替えて再開できる |
| 本業ドメイン | 顧客対応・請求書・問い合わせ返信まで届かなくなる |
後者の被害は営業の失敗では済みません。既存事業が止まります。営業用のドメインは必ず分離し、そのドメインだけでウォームアップを行います。
まとめ
- 新しいドメインには履歴がない。いきなり大量に送る挙動そのものが不審と判定される
- 4週間で 25 → 75 → 300 → 1,000通程度まで。日数ではなく数字が保たれていることを条件に増やす
- この期間に見るのはバウンス率(警告5%)と苦情率(警告0.1%)。アポ件数は見ない
- 配信停止を押しやすくするほうが、苦情率が下がって得
- 失敗の兆候は「返信が急に止まる」。文面を直しても動かない
- 本業ドメインでは絶対に送らない