苦情率は、送信元の評判を決める指標のなかでもっとも重く、もっとも回復が難しい数字です。バウンス率はリストを入れ替えれば下がりますが、苦情率は「人が不快に感じた」という記録なので、直すには送り方そのものを変える必要があります。
苦情率とは何を数えているか
受信者がメールソフトの「迷惑メールを報告」を押した割合です。
| 苦情率 | 1,000通あたり | 状態 |
|---|---|---|
| 0.02% | 0.2件 | 良好 |
| 0.1% | 1件 | 警告圏の目安 |
| 0.3% | 3件 | 危険 |
| 0.5% | 5件 | 配信を止める水準 |
数字の絶対値が小さいことに注意してください。1,000通に1件で警告圏です。「1件くらい」という感覚は通用しません。
そして母数が小さいうちは率が跳ねます。100通送って1件報告されれば1%で、これは警告水準の10倍です。ウォームアップ期間中はとくに、率と件数の両方で見る必要があります。
高いと何が起きるか
厄介なのは、ペナルティが目に見えない形で来ることです。
| 起きること | 送信側から見た様子 |
|---|---|
| 迷惑メールフォルダに振り分けられる | エラーは返らない。成功に見える |
| 受信が遅延させられる | 気づかない |
| 一部の受信ドメインで拒否される | バウンスとして返る場合もある |
つまり症状は「返信が急に止まる」という形で現れます。この状態で文面を書き直しても、そもそも読まれていないので数字は動きません。バウンス率と苦情率を毎日記録しておかないと、原因の切り分けができません。
苦情率を下げる ― 順序が決まっている
効果の大きい順に並べます。
| 順位 | やること | なぜ効くか |
|---|---|---|
| 1 | 配信停止を押しやすくする | 止めたい人が報告ではなく停止を選ぶ |
| 2 | ターゲットを絞る | 「なぜ自分に来たのか」が減る |
| 3 | なぜ送ったのかを本文に書く | 無作為の送信ではないと伝わる |
| 4 | 送信の頻度を落とす | 同じ相手への連続接触が最も嫌われる |
| 5 | 文面から煽り表現を消す | 広告色が強いほど報告されやすい |
1位が「配信停止を押しやすくする」である理由
直感に反しますが、止めやすくすることが届き続けるための最善策です。理由は、受信者が「もう来ないでほしい」と思ったときに選べる手段が2つしかないからです。
| 受信者の行動 | 送信元の評判への影響 |
|---|---|
| 配信停止リンクを押す | 影響なし(その人に送らなくなるだけ) |
| 迷惑メールを報告する | 大きく下がる(他の受信者にも影響) |
止める手段が分かりにくければ、多くの人は後者を選びます。1件の配信停止は損失1件、1件の苦情は全体の到達率の低下です。比較になりません。
実装で気をつける点を挙げます。
- 配信停止のリンクは本文の末尾に、探さなくても見える形で置く
- クリック後に確認の往復を挟まない(押すものは1つだけにする)
- メールソフトの1クリック配信停止に対応する(List-Unsubscribeヘッダ)
- 「配信不要」という返信でも同じ扱いにする
なお送信者名・住所・受信拒否の連絡先の表示は、特定電子メール法4条で定められた義務です。押しやすさは実務上の工夫ですが、表示そのものは法的な要件です。
2位のターゲット ― 文面より先に疑う
苦情の多くは「不快な文面」ではなく「自分に関係のない内容が来た」という反応です。
| ターゲットのずれ | 受信者の反応 |
|---|---|
| 業種が違う | 「うちは対象外だが」 |
| 規模が違う(大企業向けを個人事業へ等) | 「明らかに合っていない」 |
| 部署が違う | 「なぜ自分に」 |
| 既に断ったのに再送 | 確実に報告される |
最下段が最悪です。拒否の意思を記録していない運用は、必ず苦情を生みます。しかも電話で断られた相手にメールを送る、フォームで断られた相手に別チャネルで送る、といったチャネル間の漏れが起きやすいため、拒否リストは横断で1つにします。
3位「なぜ送ったのか」を書く
本文に一行、なぜこの相手に送ったのかを書くだけで反応が変わります。
- 「貴社の求人ページで◯◯を募集されているのを拝見し」
- 「貴社サイトで公開されているアドレス宛にお送りしています」
これは無作為の一斉送信ではないと伝えるためです。同時に、公開されているアドレスに送っているという事実の明示は、法的な根拠の説明にもなります。
自動で止める仕組みを持つ
苦情率は人が毎日確認するものではなく、閾値を超えたら自動で配信が止まる設計にします。
| 条件 | 動作 |
|---|---|
| 苦情率が警告水準(0.1%) | 記録して通知する |
| 苦情率が停止水準(0.5%) | そのドメインの配信を自動停止 |
| 母数が閾値未満 | 率では判断しない(1件で跳ねるため) |
止められる前に自分で止めるのが目的です。受信側に評価を落とされてから気づくと、回復に時間がかかります。
まとめ
- 苦情率0.1%=1,000通に1件で警告圏。母数が小さいうちは率が跳ねるので件数でも見る
- ペナルティはエラーとして返らない。「返信が急に止まる」という形で現れる
- 下げる順序は ①配信停止を押しやすく ②ターゲットを絞る ③なぜ送ったか書く ④頻度を落とす ⑤煽りを消す
- 1件の配信停止は損失1件、1件の苦情は全体の到達率の低下
- 拒否リストはチャネル横断で1つ。閾値超過で自動停止する仕組みを持つ