商談の前日に電話をかけるとき、出席の確認だけで終わらせるのは機会の損失です。同じ通話で相手の状況を聞いておけば、翌日の30分の使い方が変わります。ここでは聞く4項目と、会話への織り込み方を整理します。
4項目
| 項目 | 知りたいこと | 商談で効く場面 |
|---|---|---|
| ① 課題 | いま何に困っているか | 提案の焦点。関係ない説明を省ける |
| ② 検討時期 | いつまでに何とかしたいか | 追い方と優先度 |
| ③ 予算の感覚 | 金額の目安を持っているか | 提示する価格帯 |
| ④ 決裁体制 | 誰が決めるのか | 次のステップの設計 |
営業で使われるBANT(Budget・Authority・Need・Timeline)とほぼ同じ枠組みです。違うのは取るタイミングで、通常は商談の中で聞く内容を前日に取っておきます。
聞く順序 ― 電話で自然に流れる並び
①から順に聞くのではなく、会話の流れに合わせます。
| 会話の順 | 話すこと | 取れる項目 |
|---|---|---|
| 1 | 「明日15時、オンラインでお間違いないでしょうか」 | 出席確認 |
| 2 | 「他にご参加される方はいらっしゃいますか」 | ④の一部 |
| 3 | 「明日お聞きになりたい点はありますか」 | ①課題 |
| 4 | 「いつ頃までに、というお考えはありますか」 | ②検討時期 |
| 5 | 「ご予算の目安はお持ちですか」 | ③予算 |
| 6 | 「ご検討はどなたと進められますか」 | ④決裁体制 |
3が起点です。「明日お聞きになりたい点」という質問は、相手に議題を出させる形になっており、答えの中に課題がそのまま含まれます。ここで話が広がれば、4〜6は会話の中で自然に聞けます。
逆に3で答えが出てこない場合、相手は何の話か理解していない可能性があります。その場合は聞き出すより、要点を説明し直すほうが有益です。
① 課題 ― 言葉をそのまま記録する
相手が使った言葉をそのまま残します。要約すると情報が落ちます。
| 要約したもの | 相手の言葉 |
|---|---|
| 採用に課題 | 「エンジニアの応募が来るが、うちの現場に合う人がいない」 |
| コスト削減を検討 | 「今の媒体費が上がっていて、来期は減らせと言われている」 |
右列があると、商談の冒頭で相手の言葉を使って話を始められます。「現場に合う人が来ない、というお話でしたが」から入れると、相手は前日の会話が引き継がれていると感じます。
② 検討時期 ― 追い方が決まる
| 回答 | 商談後の進め方 |
|---|---|
| 今月中に決めたい | 商談で決められる形(見積・条件)を用意する |
| 来期から | 予算編成のタイミングに合わせて再接触 |
| まだ具体的でない | 情報提供に留め、無理に押さない |
| 上から急に言われた | 優先度が高い。準備を厚くする |
3行目のような相手に押すと、断りに転じます。時期が来ていない相手を追わないことも、この項目の価値です。
③ 予算 ― 答えなかったことも情報
4項目のうち最も答えにくい項目です。深追いしません。
| 回答 | 記録の仕方 |
|---|---|
| 具体的な金額 | そのまま記録 |
| 「まだ分からない」 | そのまま「未定」と記録 |
| 答えを避けた | 「未確認」と記録(空欄にしない) |
2行目と3行目を区別することに意味があります。「未定」はまだ決まっていない状態で、「未確認」はこちらが聞けていない状態です。前者は商談で提示できますが、後者は商談で聞く必要があります。
空欄にすると「予算がない」と読み違えられます。聞けなかったことは、聞けなかったと書きます。
④ 決裁体制 ― 次のステップの設計に使う
| 回答 | 商談での対応 |
|---|---|
| 自分で決められる | その場で条件の詰めまで進める |
| 上司の承認が必要 | 上司に見せられる資料を商談で渡す |
| 複数部署が関わる | 次回に関係者を集める提案をする |
| 分からない | 商談で確認する |
2行目のときに用意するものが変わります。担当者が社内で説明する道具が必要になるため、口頭の説明だけでは進みません。前日に分かっていれば当日までに用意できます。
やらないこと
- 4項目を全部埋めようとしない — 尋問のような会話になり、当日の温度が下がる
- 商材の詳しい説明をしない — 前日の電話は聞く場で、答えるのは商談の仕事
- 売り込みを重ねない — 警戒されて欠席の理由になる
- 聞いた内容を確定情報として扱わない — 商談で変わることは普通にある
1つ目が実務的にもっとも重要です。1項目でも取れれば商談の入口が変わります。4つ揃うことを目標にすると、会話が不自然になって本来の目的(離脱の防止)を損ないます。
まとめ
- 聞くのは課題・検討時期・予算感・決裁体制の4項目。枠組みはBANTと同じで、取るタイミングが前日である点が違う
- 起点は「明日お聞きになりたい点はありますか」。相手に議題を出させる質問
- 課題は相手の言葉をそのまま記録する。要約すると情報が落ちる
- 予算は「未定」と「未確認」を区別する。空欄は「予算なし」と読み違えられる
- 決裁体制が分かると、当日までに用意するもの(社内説明用の資料)が決まる
- 全部埋めようとしない。1項目でも取れれば商談の入口が変わる