営業リストを案件ごとに作っていると、同じ企業が複数のリストに現れます。この重なりが見えていないことが、リストを焼く原因です。解決策は、企業そのものを一意に管理する台帳を1つ持つことです。
案件リストと法人マスタの違い
| 項目 | 案件リスト | 法人マスタ |
|---|---|---|
| 単位 | 案件ごと | 企業ごとに1行 |
| 寿命 | 案件が終われば用済み | 永続 |
| 持つ情報 | この案件で当てる相手 | 企業の属性+全履歴 |
| 役割 | 実行 | 判断(送ってよいか) |
役割の違いが要点です。案件リストは「誰に送るか」を並べたもので、法人マスタは「送ってよいか」を判断するためのものです。
持つべき項目
| 分類 | 項目 | 用途 |
|---|---|---|
| 同定 | 照合用の社名、ドメイン、所在地、電話番号 | 重複の統合 |
| 属性 | 業種、規模、地域、事業内容 | セグメントの抽出 |
| 窓口 | 公開アドレス、フォームURL | チャネルの選択 |
| 出所 | 収集元、公開元URL、取得日 | 法的な根拠と鮮度 |
| 履歴 | 最終接触日、接触回数、チャネル別の記録 | クールダウンの判定 |
| 反応 | 返信あり/断り/時期尚早/配信停止 | 次の接触の設計 |
| 制御 | NGフラグ、理由、登録日 | 横断で送信を止める |
最下段が最も重要な列です。1社が拒否したら、全案件・全チャネルから外れるという制御をここで効かせます。
表記ゆれの統合 ― 実際の方法
同じ会社が別の行として残る原因は、社名の書き方の違いです。
| 元の表記 | 照合用に変換後 |
|---|---|
| 株式会社ABC商事 | abc商事 |
| ABC商事株式会社 | abc商事 |
| (株)ABC 商事 | abc商事 |
| ABC商事(株) | abc商事 |
変換の手順は次のとおりです。
- 全角の英数字・記号を半角に寄せる
- 法人格の表記を除去する(株式会社・有限会社・合同会社・(株)・(株)・㈱ など、前後どちらにあっても)
- 空白・中点・ハイフンなどの記号を除去する
- 英字を小文字に統一する
これで大半のゆれが吸収されます。ドメインが分かる場合は、ドメインでの照合を優先します。社名より確実です。
同名の別会社に注意
社名の正規化だけで自動統合すると、同名の別会社をまとめてしまう危険があります。実在する問題です。
| 一致の強さ | 判定 |
|---|---|
| ドメインが一致 | 同一と判定してよい |
| 照合社名+所在地が一致 | 同一と判定してよい |
| 照合社名+電話番号が一致 | 同一と判定してよい |
| 照合社名のみ一致 | 候補として保留(自動統合しない) |
最下段の扱いが設計の分かれ目です。自動で統合せず候補として残すほうが安全です。誤統合は、片方の企業の拒否がもう片方にも適用されるなど、静かに影響が出ます。
統合時の値の扱い
2つの行を1つにまとめるとき、どちらの値を残すかを決めておきます。
| 項目 | 統合のルール |
|---|---|
| 空の項目 | もう一方の値で埋める |
| 両方に値がある | 既存の値を保持する(勝手に上書きしない) |
| 接触履歴 | 両方を残して時系列で並べる |
| 最終接触日 | 新しい方を採用(安全側) |
| NGフラグ | 片方でも立っていれば立てる(安全側) |
最終接触日とNGフラグは必ず安全側に倒します。迷ったら「送らない」を選ぶ設計です。
マスタを持つと何ができるようになるか
| できること | マスタがないと |
|---|---|
| 案件横断のクールダウン判定 | 同じ企業に短期間で複数の営業が行く |
| 拒否の横断適用 | 別案件から拒否した相手に送ってしまう |
| 反応の蓄積からセグメントを作る | 毎回ゼロから当てることになる |
| 「時期尚早」の時期に再接触 | その情報が埋もれる |
| チャネルの選択(メール不可ならフォーム) | 案件ごとに判断がばらつく |
| 出所と根拠の説明 | 後から辿れない |
3行目が中長期の価値です。件数を持っていることではなく、「いつ・どのチャネルで・どう反応したか」を持っていることが資産になります。件数だけ多くて履歴がないリストは、毎回ゼロから当てているのと同じです。
まとめ
- 案件リストは「誰に送るか」、法人マスタは「送ってよいか」を判断するためのもの
- 持つのは同定・属性・窓口・出所・履歴・反応・制御の7分類
- 表記ゆれは法人格・空白・記号を除去し全角半角を寄せて照合。ドメインがあればドメイン優先
- 同名の別会社があるため、社名だけの一致では自動統合しない
- 統合時、最終接触日とNGフラグは安全側に倒す
- 資産は件数ではなく履歴。履歴がなければ毎回ゼロから当てているのと同じ