メール配信ツールの多くは開封率を表示します。数字が出ると管理しやすく見えるのですが、この指標は何を測っているのかが曖昧です。ここでは開封計測の仕組みと、実務でこれを外した理由を整理します。

仕組み ― 透明な画像1枚

開封トラッキングは、本文に1×1ピクセルの透明画像を埋め込み、その画像が読み込まれたら「開封」と記録する方式です。

段階起きること
1本文に受信者ごとに固有のURLを持つ画像タグを入れる
2受信者のメールソフトが画像を読み込む
3サーバー側にアクセスが記録される=「開封」

ここで問題になるのは、2の「読み込む」が人の行動と一致しないことです。

数字がずれる2方向

ずれ方原因結果
開封が記録されない画像の自動読み込みをオフにしている環境、テキスト形式で読む環境読まれているのに0件
開封が過大に記録されるメールソフトのプレビュー、セキュリティ製品の事前検査、画像のプロキシ経由の一括取得読まれていないのに開封

両方向にずれるため、実際の開封数より多いのか少ないのかも分からないという状態になります。指標として扱いにくい理由がこれです。

とくにBtoBでは、企業のメールセキュリティ製品がリンクや画像を事前に検査することがあります。この検査は配信直後にまとめて走るため、送信から数分後に「全員が開封した」ように見えることさえあります

外した判断の根拠

開封計測を使わない設計にした理由は3つあります。

#理由詳しく
1意思決定に使えない数字がどちらにずれているか分からないため、増減から打ち手が導けない
2代わりの指標がある到達はバウンス率と苦情率、反応は返信率で判断できる
3本来の目的から遠い成果は「日程が決まったか」であって、開封数ではない

3つ目が決定的です。アポ獲得の成果指標は「日程が確定したかどうか」であり、その手前の開封は中間指標にすぎません。中間指標が不正確なら、無理に使う理由がありません。

では何を見るか

知りたいこと使う指標信頼性
届いているかバウンス率高い(サーバーが返す事実)
嫌われていないか苦情率高い(受信側から通知される)
読まれて反応があるか返信率高い(人の行動)
関心があるかリンククリック中(機械の先読みを除外すれば使える)
成果日程確定数高い

この5つで、実務の判断はすべて成立します。「送ったが届いていない」はバウンス率、「届いたが嫌われた」は苦情率、「届いたが刺さっていない」は返信率で切り分けられます。

クリック計測は残す ― ただし条件つき

クリック計測は開封計測より意味があります。リンクを押すのは能動的な行動だからです。ただし同じ罠があります。

メールソフトやセキュリティ製品が、本人より先にリンクを開くことがあります。この先読みをクリックとして数えると、読んでいない相手が「関心が高い見込み客」として上位に並びます。

対策中身
機械のアクセスを除外するボットやリンク検査サービスのユーザーエージェントを判定し、転送はするが計測しない
ユーザーエージェントが空のアクセスも除外人のブラウザは必ず何かを送る
配信直後の一斉アクセスを疑う同時刻に大量のクリックが立つのは検査の可能性が高い
機能URLはラップしない配信停止や予約のリンクは計測対象にしない

最後の1行が重要です。配信停止のリンクを計測用URLで包むと、止めたい人が余計な経路を通ることになります。止めやすさを損なう実装は苦情率を上げるため、機能URLは素のまま置きます。

画面に載せない

不正確な指標は、画面に出すだけで判断に影響します。存在すれば人は見るからです。

したがって開封率は計測しないだけでなく、報告書にも載せません。載せるのは次の項目です。

  • 接触数(送信・投稿の件数)
  • バウンス率・苦情率
  • 返信数と内訳(前向き/時期尚早/断り/配信停止)
  • 日程確定数
  • 商談実施数

これらはすべて事実として確認できる数字です。数字が増えたり減ったりしたとき、次に何をすべきかが導けます。

まとめ

  • 開封トラッキングは透明な画像1枚で計測する仕組みで、人の行動と一致しない
  • 読まれても記録されない環境があり、逆に機械の先読みで開封として記録される。どちらにずれているかも分からない
  • 到達はバウンス率・苦情率、反応は返信率、成果は日程確定数で判断できる
  • クリック計測は残す価値があるが、機械の先読みを除外するのが条件
  • 配信停止など機能URLは計測用URLで包まない(止めやすさを損なう)
  • 不正確な指標は画面にも載せない